かんたんなストームグラスの作り方!

2020-05-19

ストームグラスというのは、19世紀のヨーロッパで用いられた天気予測の道具です。船乗りたちが使用していたとも伝えられます。

ガラス管の中にできる結晶の形、溶液の透明度などから、天気を予測します。天気予測の道具として化学的な根拠はないようですが、最近ではインテリアとしても販売されています。

気候に応じて結晶が変化するのでとてもおもしろいです。葉や羽のような形、ふわふわな雪のような沈殿、薄氷のように透明な欠片など、様々な結晶が楽しめます。とてもきれいです。

今回は、オリジナルの製法をもとに、かんたんなレシピで結晶の変化が観察できるストームグラスを制作します。

はじめに

準備するもの

必要なもの

しょうのう(樟のう、天然の防虫剤)
硝酸アンモニウム(ひえっぺなどの瞬間冷却材)
塩化ナトリウム(食塩)……塩化カリウムだとなおよい
エタノール、水
ガラス瓶(今回使用しているのは容量190mlのもの)

今回は、樟のう15g、硝酸アンモニウム4g、塩化ナトリウム3gで行いました。
溶液はエタノール50ml、水50ml。ただし、後で調整のために追加していくので、エタノールは多めにご用意ください。

樟のうと硝酸アンモニウムの入手について!

硝酸アンモニウムは瞬間冷却材(ひえっぺなど)の中身です。硝酸アンモニウムと袋入りの水が入っていて、叩いて袋を割ると両者が反応して冷たくなります。

この冷却材も硝酸アンモニウム以外の成分を使用しているものがあります。成分表示をよく確認してください。なお、私が入手できた冷却材は硝酸アンモニウムにシリカゲルが添加してありました(それしかなかった)。問題なく作ることができたので、シリカゲルの添加はOKだと思います。

硝安と略されていることもよくあります。硝安=硝酸アンモニウムの工業的呼称です。

樟のうはクスノキの成分で、天然の防虫剤です。とても有名ですが、今はめったに売られていません。化学薬品が主流のため、防虫剤の成分表示をよく確認して購入してください。

樟のうはホームセンターで購入しましたが、販売していないお店も多かったです。希少品のため、ネットで購入される場合はご注意ください。妙に高額なケースも見られます。私が購入したのは、↓の白元さんのものです。ホームセンターで1000円くらいで購入できました。

※モバイルのAMP接続(快速モード)の方はこちら(Amazon)からご確認ください → きものしょうのう

むずかしさ

所要時間:制作1時間、調整に数日、結晶が変化しだすまで半月
むずかしさ:かんたんだが、思った以上に樟のうの匂いが凄かった。

正しいストームグラスの作り方と問題点

今回はこちらのレシピをもとに製作しました!

一般的なストームグラスは、樟脳 7.09グラム、硝酸カリウム 1.77グラム、塩化アンモニウム 1.77グラムを粉末にして56.7グラムの44.1%エタノール水溶液(体積パーセント濃度50%)に溶かし、長さ25cm・直径2cm程度の試験管に入れ、針で細孔を開けた紙や革で封じて作る。ストームグラスの内容は、天気に応じて次のように変化する、といわれている。

フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』

とのことです。が、硝酸カリウムや塩化アンモニウムは入手がちょっとばかり面倒です。とくに硝酸カリウム。爆弾の原料になるため、薬局で購入する際には身分証明が必要です。

代用品を探す!

ということで、代用品を探したところ、硝酸カリウムと塩化アンモニウムのかわりに、硝酸アンモニウムと塩化カリウムを使用しているサイトさんを発見!

ちなみに、硝酸カリウムと塩化アンモニウムというのは……

硝酸カリウム(硝酸イオンカリウムイオンがくっついたもの)
塩化アンモニウム(塩素イオンアンモニウムイオンがくっついたもの)

ですから、硝酸アンモニウムと塩化カリウムに変更しても問題ないだろうという判断です。

硝酸アンモニウム(硝酸イオンアンモニウムイオン
塩化カリウム(塩素イオンカリウムイオン

硝酸アンモニウム瞬間冷却材に使用されています。塩化カリウムは減塩のお塩がそれにあたります(塩化ナトリウムの半分程度が塩化カリウムになっている)。

ただ、塩化カリウムでないといけない理由が思いつかず、そもそも減塩のお塩の半分は塩化ナトリウムだし……と悩んだ結果、「普通に塩(塩化ナトリウム)でよくない?」と結論づけました。

また、「ひえっぺ」はたしかに硝酸アンモニウムしか記載がないのですが、冷却材にはシリカゲルが混じっているものも多いです。ホームセンターを探したところ硝酸アンモニウムだけの冷却材を見つけられず、シリカゲルだけ濾せばいいと思って、シリカゲル混じりの硝酸アンモニウムを購入しました。

「できるだけ、簡単に!」を目指して試したところ、普通の食塩(塩化ナトリウム、NaCl)と冷却材でとくに問題なく作成できました!

作り方

※100%エタノールを使用するのは引火の危険があるため、水とエタノールをさっさと混ぜ合わせる作り方を採用しています。水に硝酸アンモニウムと塩を、エタノールに樟のうを溶かして、両者を混ぜ合わせるのが基本のようです。

硝酸アンモニウム、塩、樟のうを量って、ガラス瓶(容器①)に入れます。

だいたいでよいです。はかったものから容器に入れていきます。樟のうは匂いが強いため、窓を開けて換気をしながら行ってください。

今回は、硝酸アンモニウム4g、塩3g、樟のう15gを加えています。

もし、カリウムを使用したいという場合は、減塩の塩(減塩50%)を6g、つまり倍量加えてもかまわないと思われます。0.1g単位できっちりはかる必要はありません。

エタノール水の作成。エタノールと水を混ぜます。

水とエタノールを同じ量ずつ加える。今回は50mlずつ加えました。エタノールと水が体積比で1:1になるように調整してください。が、使用したのがミニビーカーのため正確には量れていません。だいたいで大丈夫です!

用意するエタノール水は、容器の容量よりも少なめにしてください。後で水、エタノールを加えて調整をします。樟のうなどを入れた分も体積が増えますのかなりで少なめの準備でOKです。

①の容器に、エタノール水を加えて混ぜます。

しっかり蓋をして、軽くシェイクしてください。
この時点では溶けません。

別のやりかた

ここまでの行程ですが、容器が余分にある場合は次の方法もおすすめです。

水50mlをはかり、硝酸アンモニウムと塩を加えて溶かします(容器①)エタノール50mlを加えて混ぜます(※)。ガラス容器に樟のうをはかりとっておき、容器①を加えます。このとき、珈琲フィルターなどでろ過するとなおよいです。

この方法のメリットは塩類だけ先に溶かせること、ろ過しやすいこと、硝酸アンモニウムと水が反応して溶液が冷たくなるのを実感できることの3点かなと思います。硝酸アンモニウムを解かすと、水温が一気に下がるのでおもしろいですよ!

※エタノールの危険性を理解しているなら、エタノール50mlをガラス容器(樟のう入り)に加えてもよいと思います。樟のうはエタノールによく溶けるため透明になります。溶液①を加えると、白色の沈殿が一気に出ておもしろいです。

湯せんします。

蓋を緩めて、湯せんをします。樟のうの匂いがとにかく強いためご注意を!
3分~5分ほどおいてよく混ぜるときれいに溶けます。溶液は無色透明です。

溶けたら、ろ過しようと考えてペットボトルで湯せんしました。

今回はシリカゲル入りの冷却材を使用したので、瓶へ移すときにコーヒーフィルターでろ過をすることにしました。

ただ、とくに残留物(溶け残り)はなかったので、しなくてもよいかなと思っています。

※もし溶け残った場合はアルコールを少し加えてください(100mlにつき、2、3mlずつ増やしていきましょう)。

しばらく置いておく。

10分ほどで結晶が出てきました。粉砂糖、もしくは片栗粉が大量に出てきたような感じです。

無色透明です
雪が降るみたいに結晶が析出!
結晶がさらに析出!
水・エタノールを加えて調整

ちなみに、翌日には半分くらいが上昇して浮いていました。

三日ほど経つと徐々に結晶っぽくなって、底に沈むように。二週間ほどして、針状、フレーク状、葉っぱ(羽)様の結晶がみられるようになりました。

作製して一週間くらいの間は調整期間です。

結晶の量が多いときはエタノールを数滴、逆に少ないときは、水を数滴加えてください。結晶の量は容器の半分から3分の2くらいでよいかと。

上の写真(右)は、エタノールや水を加えて調整して液量を増やした完成品です。最初はふわふわの雲みたいな沈殿でした。綺麗な結晶を生成するまで少し時間がかかります。

今回は春に作成したので、気温が高くなることを見越して結晶の量を3分の2くらいに調整しました。夏場に作成して、長く観察するつもりなら、半分くらいでよいと思います。

結晶の変化

作製して一ヶ月半程度ですが、いろいろな結晶が現れました。

雪・針状・葉状の小さな結晶が混在

大きな葉状結晶を形成

葉状(羽っぽい)の結晶がびっしり

薄い氷のようなフレーク状の結晶が

おわりに

簡単にできますし、気温の上下で結晶の量が変化します。結晶作成、溶解度の勉強と考えればとてもおもしろい実験素材です!

結晶が安定してできるようになるととてもきれいです。観察するのも楽しいですよ。ただ、天気と結晶の相関関係はとくにつかめていません。

夏休みの自由研究にするのであれば、天気と結晶状態を観察して、法則があるかを確認してみるのもよいと思います。個人的には、寒暖差のほうが関係が深いように思えるため、昼夜の温度差や月の温度をグラフ化するなどして、法則を探してみたいなと思います。

ガラス瓶に水溶液を入れているため、直射日光のあたる窓際に置いてはいけません。レンズの役割を果たすケースがあるため、光を集めて窓枠等を発火させる危険があります。